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第11話:死神!?
イラスト:わたなべふみこ
 
 
  ツピちゃんは、霧のかかった丘みたいな場所をとぼとぼと
歩いていました。
「ここはどこだろう。僕はなんでこんなところにいるんだろう。」
頭にもやがかかったみたいでした。
「そうだ、僕は鳥なんだ。何も地面を歩く必要はないんだ。」
そう思って飛び上がろうとしましたが、体がえらく重く
感じて飛べませんでした。
「そういえば、猫に襲われて、翼を傷めたんだ。だから
飛べないんだ...」ツピちゃんはため息をつきました。
「猫にやられた。そして、こんな所にひとりでいるということは。」
ツピちゃんは、急に青ざめ、今、自分がどうなっているか
分かりはじめました。
「ああ、なんてことだ。僕、死んじゃたんだ。あの世に
いるんだ。」
そして、泣きだしました。
「僕、夢があったのに。あの鳥に会いたかったのに。」
ツピちゃんは、しばらく、その場でひくひく泣いていましたが
そんなことをしててもどうしようもないと思いました。
「ここで泣いていてもしょうがないや。とりあえず、
まっすぐ歩いてみよう。」

しばらく歩いていると川がみえました。
なんだか、いろんな生き物が川の向こう岸に渡ろうとしている
ようでした。ツピちゃんは、走ってそばまで行きました。
「ねえ、ねえ、ここは何処。君はこれからどうするの。」
ツピちゃんは、コジュウカラを見つけて話かけました。
しかし、コジュウカラは、うつろな目をして、ツピちゃんの
ことが見えているか見えていないのか、無視して歩き続けました。
「なんだ。あいつ。」
ツピちゃんは、次にスズメを見つけて話かけましたが、
同じような感じでした。
「しょうがない。あそこのカラスに聞いてみよう。」
ツピちゃんはおそるおそるカラスに近づきましたが、やはり
うつろな目をして、呼びかけても反応がありませんでした。
「う~ん、どうしよう。」
ツピちゃんが立ち止まっていても、周りの動物や鳥は、
ゆっくりとした足取りでしたが、止まらずに歩いていました。
そうこうしているうちに、ツピちゃんの後ろに猫が来ました。
「わー、猫だ。こんなところで、また、襲われたくないよう。」
ツピちゃんは、叫び、走りだしましたが、猫はツピちゃんを
見てもいないようでした。

「なんだ。なんだ。騒がしいな。」

ツピちゃんは、ここに来てから、はじめて、自分以外の声を
聞きました。
「よかった。やっと、誰かと話ができる。」
ツピちゃんが、声がした方へ行くと、そこには、首の長い
ハゲワシがいました。ただ、羽や肉がついていない骸骨の
姿でしたが。

「お前か、ここで騒いでいたのは。」その骸骨がいいました。

ツピちゃんは、驚いて声が出せませんでした。

「わしは、死神だ。お前は鳥だから、鳥の姿で現れてやったのだ。」
「死神...初めて見た。」ツピちゃんはいいました。
「あたりまえだ。何回も会うものではない。」
「僕を迎えに来たの。ああ、僕は本当に死んだんだ。」ツピちゃんは
涙がでました。
「馬鹿者め。こんな元気な死者がいるか。周りをよく見ろ。
おまえなんかと違って、エネルギーを失くして、意識もないぞ。」
死神はフンといった感じでいいました。
「だって、僕の目の前にあなたがいるから...」
「死は誰にでも訪れる。わしなんかが、迎えに行かなくてもな。
わしは、時々、お前のように、まだ、生命力にあふれているやつが
迷って来るのを追い返すのを仕事としているんだ。だから、お前は
さっさとこの場所から去るのだ。」
「僕、まだ生きているんだ。」ツピちゃんはまた泣きだしました。
今度はうれし泣きです。
「はいはい。あっちの光りを目指して進みなさい。行けば
自然と戻れるだろう。」
「死神さん、ありがとう。」
ツピちゃんは、回れ右をすると光の方へ飛びました。
すると、あんなに重かった体が嘘みたいに軽くなり、そして
ぐんぐんと飛べました。
「あ、しまった、死神さんに、あの鳥のことを聞けばよかった。」
戻ろうと振り向いた時に、急に体が痛みだしました。そして
やわらかな布の上に置かれている自分に気がつきました。