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第12話:気がついたら
イラスト:わたなべふみこ
 
 
   ツピちゃんは、翼を固定された状態でやわらかな布の上に
寝かされていました。
夢なのか、本当に死の世界へ行っていたのかは、今となっては
分かりませんが、意識が戻ってからは、絶えず痛みが襲ってきました。
「痛いよ、痛いよ」ツピちゃんはつい声を出してしまいました。
「お、気がついたな。お姉さんを呼んで来るよ。」
ツピちゃんが声をした方向を見ると、白くて、かすかに
ピンク色をしたツピちゃんよりもはるかに大きな鳥がいました。
「カラスとどっちが大きいのだろう。でも、あのくちばしに
かまれたら怖いな」ツピちゃんは、ぼうとした頭でそんなことを
思いました。
その巨大な鳥は、ツピちゃんが意識があると確認すると
鳥なのに、飛ばないでてくてくと歩いて部屋から出て行きました。

どうしたら、この痛みが止まるのだろう。止まるのだったら
さっきいた世界に戻りたい。でも、あの陰鬱な世界にずっといるのは
耐えられない。

そんなことを考えていると、無意識に「チー、チー」と声を
出していました。

「気がついたのね。よかった。まずはひと安心。」

ツピちゃんは、何をいっているかはわからなかったけど、
声がした方を見ました。
そこには、人間がいました。先ほどの白い鳥も、怖がらずに
人間のそばにいました。彼が、"お姉さん"といったのは、
この人間のことのようでした。
お姉さんは、「気がついたら、まずは食事。」といって、
部屋から出て行きました。

白い鳥は、残ってツピちゃんに話しかけました。

「君の名前は何というんだい?」
「ツピ」ツピちゃんは、声を出すのがおっくうだったけど
答えました。
「ツピ君か。僕は、オオバタンの"翔"というんだ。よろしく。」
「僕、どうしてここにいるの。」
「君は本当に運がよかったんだ。君をくわえた猫が、前をよく見ていないか
せいなのか、お姉さんとぶつかったんだ。そして、その瞬間に君を
落として、逃げたんだ。本当に、こんなこと、偶然にしても
めったにあることじゃない。」そして、オオバタンは、自慢げにいいました。
「お姉さんは、鳥の怪我を何度も治療したことがあるから、君も
きっと大丈夫だよ。」

気を失っている間にそんなことがあったのか、ツピちゃんは、
猫のお腹に中にはいってなかったことに感謝しました。

生きているだもの、痛いからといって、あの世界に戻りたいなんて
思っちゃだめだ。今は、我慢して、再び、飛べるようにならなくては。
それに、早く、弟たちに無事を知らせたい。

ツピちゃんは、痛さに我慢しようと決意しました。でも、ずきんずきんと
痛さが襲うとやっぱり気弱になりました。