第13話:強制給餌
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イラスト:わたなべふみこ |
お姉さんが手に小皿を持って、ツピちゃんのところへ 来ました。 「ミルワームだけど、食べるかな。」 ツピちゃんの前に小皿を置きました。ツピちゃんが 小皿を見ると、白くて、細長い小さな虫が5匹ぐらい 動いていました。見たことがない虫でしたが、 食べられるとは思いました。 けど、ツピちゃんは、食欲がなかったせいも ありましたけど、人間から差し出されたものを 食べるということに、警戒心が働き、そして、何よりも しゃくに感じました。 「素直に食べた方がいいよ。」 その様子を見ていたオオバタンの翔ちゃんが ぼそっといいました。 「ム~」ツピちゃんは、お皿の上を動くミルワームを にらみつけていました。 「やっぱり、野生の子は素直に食べてくらないか。」 お姉さんは、そういうと、また部屋から出て行きました。 「何で、食べないの。」翔ちゃんが聞きました。 「別に。お腹すいてないから...」ツピちゃんは 答えました。 「後悔しても、知らないよ。」 再び、お姉さんが来ました。 今度は、透明な器具を入れた小鉢を手にしてました。 ツピちゃんの前に座るとお姉さんは、透明な器具を いじりました。すると、細い筒に茶色のどろどろした 液体が吸いあがりました。それから、ツピちゃんを 片手で掴みました。 「痛いよ。止めてよ。」ツピちゃんは、抵抗しましたが うまいぐあいに掴まれてびくりとも動けませんでした。 「ごめんね。強制給仕をするね。」 くちばしが開けられと、透明な筒がつっこまれ、 中の液体が胃の中に入っていきました。 ツピちゃんは、びっくりして硬直してしまいました。 その後、逃げないと再び、同じことをされると 思いもがきましたが、お姉さんは、手馴れているので 再び、ツピちゃんにくちばしから餌を胃に流し込みました。 「今回は、これで止めとくね。つらかったでしょう。 ごめんね。」 そういうと、お姉さんは、ツピちゃんを布の上に優しく 置きました。 「私が、側にいると落ち着かないでしょうから、 退散するね。翔ちゃんもあまりじろじろ見ちゃだめよ。」 「は~い」翔ちゃんが答えました。 お姉さんが部屋から出て行ったあと、翔ちゃんが ツピちゃんにいいました。 「ほら、素直にミルワームを食べておけばよかっただろ。」 ツピちゃんは何もいえませんでした。 「僕は、子供のころ、あんなふうに食事をもらったことが あるけど、慣れていない君らはつらそうだもんね。」 「この虫を食べれば、もうあんな目にあわされないよね。」 ツピちゃんは、涙目で、いいました。 「うん、そう思う。」 翔ちゃんは、ツピちゃんの災難を半分おもしろがって いるような表情をしてました。 |