第3話:巣立ち
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イラスト:わたなべふみこ |
今日は、朝から5羽の雛たちは、そわそわしていました。 兄弟たちの誰が言い始めたわけではないのですが、 何故か、その日だということが、みんな分っていました。 「まず、僕がでるからな」 一番上のお兄さんがいいました。 「それから、順番に」 「ずるいな、僕が1番目!」ツピちゃんはいいました。 そうしたら、お兄さんは、「お前は、最後」といいました。 「なんで! だったら3番目でいいよ。順番でしょ!」ツピちゃんは抗議しました。 「お前は、狭いこの場所で、はばたいて、僕たちの 頭を叩いていたじゃないか。お前は、心配しなくても 確実に外にでていける」 それから、ツピちゃんの弟たちをちらっと見て 「弟たちが、ちゃんと外へ出て行けるか、見届けるのは、 大事な役目だぞ」 ツピちゃんは、不満だったけど、弟たちの不安そうな目を 見てしぶしぶ承知しました。 お父さんとお母さんの声が聞こえ始めました。 「さあ、行くぞ」というやいなや、一番上のお兄さんは、 巣箱の穴に飛び乗りそして出て行きました。 2番目のお兄さんも、その後に続きました。 「じゃ、お兄ちゃん、先に行くね」 ツピちゃんの直ぐ下の弟が、出て行きました。 一番下の弟は、震えていました。 「怖いよ。お兄ちゃん。僕はまだ無理だよ。」 「大丈夫だよ、外では、お父さんも、お母さんも待っている。 僕ら全員が飛び立てると思ったから、今日という日を 選んだんだ。」 「そうかな...でも」 「お前が、出て行かないと、僕も、出て行けない。 お前が勇気を出すことは、僕を助けることなんだぞ」 「う・うん」 一番下の弟は、ツピちゃんにせかされて、なんとか、 穴に乗りました。 外では、お父さんとお母さんが、呼んでます。 先に出た兄弟たちも見守っています。 「お、お兄ちゃん、行くよ」 震えながらも、弟は、飛び立ちました。 そして、いよいよツピちゃんの番です。 |