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第5話:子供達の日常
イラスト:わたなべふみこ
 
 
  無事、巣の外へ出た兄弟たちですが、まだひとかたまりになって、
お父さんやお母さんの後を付いて廻ってます。

最初の頃は、まだみんな飛べたといっても、すぐ疲れるし、飛ぶのも
不器用なので、枝にじっとしていることの方が多かったです。
でも、だんだん、飛ぶ力がついてくると、あっちこっっちと
動き回るようになって、運動量も増えてきました。
そうなると、お腹もすいてくるので、やかましく鳴いて、
お父さんやお母さんに食事の催促をします。

そう、体の大きさも、お父さんやお母さんに大分近づいたのに、
まだ、みんな、自分で餌を取ることを知らないのです。

巣立ちの時、恐怖を感じて、すぐに飛び立てなかった
ツピちゃんは、しばらくは、お兄さん達にも、弟達にも
恥ずかしくて、おとなしくしていましたが、
翼に力がついてくると、巣の中にいた時の気持ちが戻ってきました。

「僕は、もう飛べるんだから、それでいいじゃないか。
お母さんも、"怖いということを経験すれば、利口になるのよ"
といっていた。意味はわからないけど、はずかしがる必要はないんだ。」

ということで、最初は、遠慮がちに餌をねだっていた
ツピちゃんですが、最近は、また兄弟達を押しのけて
お父さんやお母さんの追っかけ廻しているので、
一番上のお兄さんは、あきれていました。

ちょっと満腹になったツピちゃんは、弟達と安全な場所で、いろいろと遊び始めました。

枝をつっついたり、葉っぱをひっぱてみたり、木の幹を叩いてみたり

そんなことをしていると、弟のひとりが、枝をはっている虫を見つけました。

「お兄ちゃん、虫がいる。あれ、食べれるだよね。」

「よし、取ってみよう。」

ツピちゃんは、虫の方にくちばしを伸ばしましたが、今、止まっている枝から、
ちょっと遠かったので、バランスをくずし、またもや落ちそうになりました。

バタバタ羽ばたいて、体を立て直しました。

弟達は、巣立ちの時のツピちゃんを思い出し、心配しました。

「こういうことは、一度、経験しておくと、次からは平気なんだ。」
と、ツピちゃんは、えらそうなことをいってます。

「ほい、食べ物」

ツピちゃんは、初めて取った虫を弟に誇らしげにあげました。

弟たちも、そんなお兄ちゃんを少し見直しました。